[皆様へ連絡事項]
[健診・人間ドックを受けましょう]
 生活習慣病の予防や早期発見・早期対策のために健診や人間ドックは大変有用です。今年も新年度が始まり、職場での特定健診を兼ねた定期健診、市や町の特定健診・住民健診・人間ドックが始まることと思います。毎年きちんと受けて、結果が出ましたら、是非、かかりつけ医にお見せ下さい。
 もし再検査や精密検査の指示が出ましたら、そのまま放置せずにご相談ください。また、健康診断の機会がなかなか得られない方は、当クリニックでも独自の健康診断や人間ドックを実施しておりますので、是非、ご相談ください。
 甲斐市の人間ドック、南アルプス市の人間ドックは、当クリニックも指定医療機関になっておりますので、当クリニックで受けられます。甲斐市の人間ドックは、4月から始まっています。

[日本脳炎予防接種について]
 日本脳炎の予防接種は、重篤な副作用発生のためにここ5年ほど接種を中断していました。昨年、新しい製法によるワクチンの製造が再開され、この4月からようやく接種を積極的に勧めることになりました。ただし、現時点では、積極的に接種を勧めるのは、3才になって初めて接種する場合(1期初回)に限定されています。接種が途中で中断し、所定の回数が完了してない場合、今後どのように接種していくか、まだはっきり決まっていません。

[麻しん風しん予防接種について]
 4年前から2種類を混合して麻しん風しん混合ワクチンとして接種しています。今年度も同様に、以下のように2回接種を受けて下さい。
第一期:1才以上〜2才未満の1年間に1回接種
第二期:小学校入学前の1年間に1回接種(5才以上〜7才未満の年長児)
平成20年度から実施されている第三期:中学1年生、第四期:高校3年生
は、今年度も継続されますので、忘れずに接種を受けて下さい。

[子ども手当でお子さんにワクチン接種を!!]
 民主党政権の公約により、今年6月から「子ども手当」が、15才までのお子さんに一か月当たり1万3000円支給されます。これをお子さんのために有効に使う方法の一つとして、是非、ワクチン接種を考えてあげて下さい。任意接種で費用を個人負担するワクチンとして、水ぼうそう、おたふくかぜ、ヒブワクチン(Hib)、子宮頸癌ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、があります。

[医療費が改定されました]
今年四月、二年ぶりに医療費(診療報酬および薬剤費)が改訂されましたので、解説いたします。今回は、10年ぶりにネット(全体)でのプラス改定となりました。政権交代によって与党となった民主党は、医療崩壊をくい止めることを公約に掲げましたので、自民党・小泉首相の時代からずっと抑え込まれていた医療費をかなり増やしてくれるのではないか、と期待されました。医科診療報酬で1.74%アップ、ということですが、薬価が下がりますので、全体で0.19%アップ、入院分の3.03%増に対し、外来分の引き上げ幅はわずかに0.31%と、雀の涙ほどの増加です。むしろ、外来診療だけの診療所にとっては、再診料が引き下げられたので、非常に厳しい改定となりました。

<改定のポイント>
1.診察料では、診療所の再診料を71点から69点へ引き下げ。
2.診療明細書を無料で発行。
3.病院への手厚い配分により、再診料、手術料、入院基本料などの引き上げ。
4.特定の分野(救急、産科、新生児・小児)への手厚い配分。
5.在宅医療の関連では、往診料を650点から720点へ引き上げ。
6.眼科や耳鼻科の検査料、皮膚科の処置料の引き下げ。
7.全般的な薬価の引き下げ。
8.後発医薬品の使用促進。

<各項目の解説>
1.医師の技術料の中核である診察料では、再診料が診療所で引き下げられ、病院では引き上げられて、同一の点数になりました。
2.すでに明細のわかる領収書を発行しておりますが、さらに診療内容が詳しくわかる明細書を無料で発行することになりました。ただし、同じ内容のものを毎回もらう必要はない、ということで、ご希望がなければ発行を省略しますので、受付に申し出て下さい。紙など資源のムダを避けたいと思います。
7.今回も多くの薬の価格(薬価)が引き下げられました。このため、多くの患者さんで、この4月から窓口負担金が減っています。
8.院外処方の処方箋を引き受ける調剤薬局で、後発医薬品を扱いやすくするために規則が緩和され、また、後発医薬品を多く扱うほど加算点数を多く取れるように優遇しました。

<補足説明>
 高齢化社会が進行しているわが国では、今後も医療費は増加しつづけるものと予想されます。国の財政は火の車ですので、健康保険料などの国民負担は増加していくものと思われます。いずれ、消費税率を引き上げて医療福祉の費用に充てるなど、思い切った施策が必要になることでしょう。このような厳しい医療情勢の中で、限られた医療財源のムダを減らし、有効に活用しながら、より良い医療サービスが提供できるように日々努力していきたいと思います。

解説シリーズ[心を考える](その9);
いじめ:(上)

 「心を考える」シリーズでは、(その7)「不登校」、(その8)「ひきこもり」について解説してきました。それらと関係のあるテーマとして、今回は「いじめ」を取り上げます。むずかしいテーマですが、私自身も勉強しながら解説していきたいと思います。

<はじめに>
「いじめ」といわれて、何を連想しますか?「いじめっ子」「いじめられっ子」「「いじめ自殺」「職場いじめ」「ネットいじめ」、などいろいろなことばが思い浮かびます。その他、いじめということばではなくても、関連した状況として、セクハラ、パワハラ、児童虐待、ネグレクト、ドメスティックバイオレンス(DV)、ことばの暴力(キモい、ウザい、など)、シカト、などの現象も思い浮かびます。つまり、相当に広い概念をもつことばと、とらえるべきです。
 現在の日本では単に「いじめ」といった場合、学校で子供がおこなう「いじめ」のように児童〜生徒のレベルの「いじめ」を指すことが多いと思います。たとえば、持ち物を隠す(教科書、クツ、など)、仲間はずれにする、差別的な屈辱的な「あだ名」で呼ぶ、「きたない」といって大げさに避けるしぐさをする、掃除を一人でさせる、金品を要求する、盗みをやらせる、など。
 しかし、実際には大人の社会でも「いじめ」はあります。「職場いじめ」や「ネットいじめ」など、大人の社会の「いじめ」についても解説したいのですが、さしあたりは、児童〜生徒のレベルの「いじめ」について解説していきたいと思います。

<「いじめ」とは?>
 1985年(昭和60年)、当時の文部省は、各地の教育委員会宛に「いじめの問題に関する指導状況等に関する調査」を依頼しましたが、その際、「いじめ」の定義として、「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」としました。
 その後、2007年1月に、従来の定義を見直して、「子どもが一定の人間関係のある者から、心理的・物理的攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」「いじめか否かの判断は、いじめられた子どもの立場に立って行うこと」としました。
 これ以外にも、いじめ問題の研究者たちは、それぞれ独自の定義を提案しています。たとえば、
いじめとは、−−−−−−−」
いじめとは、−−−−−−−」
いじめとは、−−−−−−−」
 これらの定義におけるポイントとして、まず「同一集団内」としたのは、街頭などでの行きずりの人間に対する暴力、いやがらせなどと区別するためです。
「優位・劣位の力関係」については、単に強者・弱者という関係だけを意味するものではなく、集団内の状況の変化によっては強者が劣位になり、弱者が優位になるといった立場の逆転がおこることもあります。
 また、ある種の行為が「いじめ」かどうかは、それを受ける子がいじめと感じるかどうかの感じ方(認知)によります。「いじめ」か、「からかい」や「ふざけ」や「ひやかし」の範囲なのか、その辺の見極めが大切です。

<いじめのとらえ方>
「いじめ」の現場には、次のような4つのグループが見られます。
1.いじめをやっている者(加害者)
2.いじめをされている者(被害者)
3.いじめを、はやしたてたり、おもしろがって見ている者(観衆、やじうま)
4.いじめの現場から立ち去ったり、見て見ぬふりをしている者(傍観者)
 これらの4つのグループのうち、2.被害者は固定していますが、他の3グループ1.3.4.は、流動的に入れ替わって他のグループに移ることが見られます。
 いじめは、日本だけでなく、世界のいずれの国においてもみられます。つまり、人と人とが関係を結び集団を形成している所では、どこにでも起こりうる現象といえます。しかし、だからといって、いじめがあってもしかたない、とあきらめることはできません。避けがたい問題であるからこそ、いじめがいろいろな問題を起こすのを抑止するための「歯止め」を、生活の知恵として備えようとしてきたのです。

<いじめはどう変化してきたか>
 いじめは昔からあったと思われますが、時代が移り変わるとともに、かなり様変わりしてきているものと思われます。
 かつては、いじめは、身体的にも性格的にも弱い子が標的になっていた感じがありましたが、社会の変化とともにいじめ構造は変わってきたようです。
 いじめについて、「子どもは、いじめたり、いじめられたりしながら、育ってきたものだ。そして、その中で強くなってきたのだ。」という人もいます。しかし、1980年代初めごろ、陰湿で残忍ないじめが増えてきて、自殺や不登校の原因になることも多くなり、いじめの質が変わってきた、との指摘があります。
「現代のいじめ像」の特徴をあげてみると、今のいじめは、
1.あらゆる子どもが「いじめ」の対象となるおそれがある。
2.一人の子どもを、複数の子どもが集中していじめる。
3.「いじめ」の方法・手段が、執拗かつ陰湿になっている。
4.「観衆」と「傍観者」が存在する。
5.「いじめ」は、現代社会のひずみを反映している。
といった特徴があります。
 はっきりした罪の意識もなく、いじめている相手への配慮もなく、自分の行為の意味すらよくわからないまま、おもしろいとか、スカッとするといった単純な動機でいじめてしまう。いじめ・いじめられ関係が固定しておらず、流動的で、入れ替わったりもするような状況が見られます。
 昔と違って、一人の「いじめっ子」がいじめを引き起こしているのではなく、学級その他のこども集団が、気まぐれな集団心理を醸しだし、それが昂じていって「いじめ」の多発、深刻化、を起こしてきている、といわれています。

<「いじめ」が引き起こす諸問題>
 いじめを受ける側は、長期間にわたって深刻な心理的・身体的苦痛をこうむる場合が多く、いじめの直接的な被害だけでなく、いろいろな副次的な問題によって苦しむことになります。たとえば、次のような諸問題が挙げられます。

1.不登校;児童生徒の不登校の中には「いじめ」がきっかけとなることがある。
2.精神疾患;いじめによって心身に大きなダメージを受けると、いろいろな心身症状を示す子どもが見られます。幻覚妄想状態、パニック症状、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状、などです。
3.対人恐怖・人間不信・自信喪失;小学生〜中学生のころの「いじめ体験」が、大学生や青年期にまで後遺症を残しているケースが見られます。これは、長期的には勉学に悪影響を及ぼしたりして、低学歴や生活水準の低下にむすびつく可能性があります。
4.仕返しとしてのいじめ・暴力行為への発展;いじめられた者が、さらに弱い者をいじめる、家庭内で弟・妹・ペットなどをいじめる、いじめた者を襲って傷害事件を起こす、などがみられることがあります。
5.自殺;いじめによる最も悲惨な結末は、自殺です。マスコミが取り上げて報道されることもあります。未遂も含めるとかなりあるものと思われます。
(以下、次号へ続きます)


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