[皆様へお願いと連絡事項] *新年度が始まり、新しく入園・入学した子供さんたちは、毎日元気に通っていることと思います。 慣れない集団生活の中で体調をくずしたり、伝染性の病気をもらってくることもあるでしょう。ご家庭では、子供さんの体調の変化に十分注意して下さい。また、母子手帳を一度よく見ていただき、受け忘れている予防接種がないかどうか、チェックしてみてください。よくわからない場合は、かかりつけ医にご相談下さい。 <学校での予防接種が変わります> 今年度から、学校での予防接種の制度が変更され、小学校・中学校では予防接種を実施しないことになりました。小学校での二種混合と日本脳炎、中学校での日本脳炎、がすべて個別接種に移行します。つまり、学校で日を決めてまとめて実施することが廃止されますので、保護者の責任で医院などで個別に接種を受けることになります。この件に関しましては、各学校から保護者あてに説明があるものと思います。また、竜王町では、従来、個別接種と集団接種とで平行して実施していた三種混合と日本脳炎が、個別接種だけとなりました。したがって、竜王町での集団接種は、ポリオ、ツベルクリン・BCG、だけとなりました。当クリニックでは、麻疹(はしか)、風しん、三種混合、日本脳炎、二種混合、水痘(みずぼうそう)、おたふくかぜ、インフルエンザ、について予防接種を実施しています。平日の午後に時間をとっていますので、ご希望の方は、できるだけ電話で確認してからおいで下さい。その際は、母子手帳をご持参下さい。 <検診・人間ドックをうけましょう> 新年度が始まり、今年も職場検診や市町村の住民検診・人間ドックが始まることと思います。 できるだけ毎年受けるようにしましょう。結果が出ましたら、是非、かかりつけの医師にお見せください。もし、再検査や精密検査の指示が出ている場合は、そのままにせずにご相談ください。もし,健康診断の機会がなかなか得られない方は,当クリニックでも独自の健康診断や人間ドックをおこなっておりますので,ご相談ください。 解説シリーズ[心を考える](その2) パニック障害(後半) 前回に引き続き、パニック障害について後半の解説をします。 <パニック障害の原因は?> 私たちは、危険に直面したときに不安や恐怖を感じることで、身を守っています。 しかし、不安や恐怖を感じる脳のしくみが変調をきたしたら、どうなるでしょうか?不安や恐怖を感じる部分が誤作動を起こし、危険がないのに「警報」を鳴らし続け、不安感・恐怖感・動悸・息苦しさ・めまい感などの多彩な症状を起こします。パニック障害の原因は、簡単にいえば、そういうことから来ているようです。 もう少しくわしく説明します。人間の神経細胞は、お互いに結びついてネットワークを構成しています。神経細胞同士の信号の伝達には、「神経伝達物質」という物質が関与しており、現在、30種類ぐらいが発見されています。不安や恐怖などの感情のコントロールには、いくつかの神経伝達物質がかかわっていますが、そのバランスに乱れが生ずることによってパニック障害が引き起こされるのではないか、といわれています。 パニック発作は突然起こるものですが、発作を引き起こす「ひきがね」になるものがあります。たとえば、いわゆる「ストレス」です。大きなストレスがかかっている人、ストレスに弱い人、はパニック障害になりやすい、といわれています。ストレスには、仕事上の問題、健康の問題、家族関係、環境の変化(引っ越し、家の新築、など)、喪失体験(身近の人の死、失恋、ペットの死)、結婚・夫婦間の問題、など多種多様のものが含まれます。しかし、ストレスは「きっかけ」や「ひきがね」にはなりますが、本当の意味での原因ではないでしょう。そこまで突き詰めていくと、まだ原因については、すべてが解明された訳ではありません。 <どのような経過をとりますか?> パニック障害に対して適切に対処しなければ、どうなるでしょうか?前号でも少し解説しましたが、パニック発作をくりかえすために、患者さんは内科を始め各科を受診し、いろいろな検査を受けますが、結局はっきりした原因がわからず、「心配いりませんよ」、「気のせいですよ」、「疲れているのでは」、などといわれます。しかし、その後もパニック発作を起こすため、「また発作が起こるのではないか」という予期不安をもつようになります。そうすると、パニック発作が起こったときに助けを求められない状況や場所(車の運転、エレベーターの中、電車、など)を避けるようになります。これを外出恐怖、広場恐怖、と呼びます。こうなると、一人で外出できなくなったり、社会生活に大きな影響が出ます。一部の患者さんでは、二次的な「うつ状態」となったり、家から出られないという「ひきこもり状態」となったりして、慢性化・長期化していく場合もあります。もちろん、そういう方向に進む前に早期診断し、適切な治療をすることによって治せる病気です。 <治療の考え方> パニック障害の症状により、重症度を軽症、中等症、重症の三段階に分けて治療の方法を考えます。治療方法には、薬物療法、精神療法、があり、組み合わせて実施していきます。専門的治療は、心療内科や精神科の医師が担当すべきです。 <実際の治療はどうしますか?> 治療の出発点は、患者さんに「これはパニック障害という病気であって、治療をすれば治る病気です。この病気自体で、命にかかわることはありません」ということをよく理解してもらうことです。 軽症では、必要に応じて抗不安薬を頓服で内服するという薬物療法で対処できます。 中等症では、パニック発作をくりかえしており、予期不安によって行動の制限が出てきて、社会生活に支障を生じています。このような場合は、抗不安薬と抗うつ薬を併用し、さらに支持的な精神療法をおこないます。抗不安薬としては、ベンゾジアゼピン系の薬剤が中心で、不安をやわらげます。抗うつ薬では、副作用の少ないSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、まず使うべき薬です。これは、効果が現れるまでに1〜2週間かかるといわれていますので、根気よく服用を続けることが大切です。また、支持的な精神療法は、患者さんの苦しみを理解し受けとめる「受容」、問題点を整理し分析して不安をやわらげる「支持」、病状や今後の見通しを説明し合理的な治療を約束する「保証」という考え方でおこなっていきます。 慢性化・重症化した場合、主に恐怖症状のため社会生活に著しい支障をきたしています。パニック発作に対する恐怖のために、一人でいられない、乗り物に乗れない、自宅から出られない。仕事や家事など自分の役割を果たすことができず、そのために自分を責める。医療機関を転々と受診する。といった状況になっています。この場合、薬物療法を強化し、専門的な精神療法を併用します。外出を困難にする「広場恐怖」に対しては、パニック発作が起きた場所や状況の中から最も楽なものを取り上げ、その状況を再現しながら徐々に慣らしていって、恐怖感がなくなるまで繰り返してゆく、という行動療法も用いられます。そうして恐怖の対象を一つずつ克服していって、普通の生活を取り戻していきます。 パニック障害の治療期間は、重症度にもよりますが、かなり長期にわたりますので、気長に取り組んでいく必要があります。たとえば、薬の量を調節するのに2週間〜3か月、発作の再発を防ぐ治療に1〜3か月、症状が完全におさまっても、その状態を維持しながら経過をみていくのに半年〜1年、それから徐々に薬を減らしていくのに半年〜1年をかけ、最後に服薬を中止して治療を終了します。 http://www.jpdc.or.jp/ |