解説シリーズ[心を考える](その5)

自 閉 症(後)

 前号に引き続き、自閉症について解説します。
<どのように診断しますか?>
 米国精神医学会による「自閉性障害の診断基準」、世界保健機関WHOの国際疾病分類による「小児自閉症の診断基準」がありますが、専門的になりますので省略します。診断の根拠となる最も重要な事項は、「社会性の障害」、「コミュニケーションの障害」、「想像力の障害とそれに基づくこだわり行動」の3つの症状が、3才までに明らかになること、といわれています。つまり、だいたい3才までに症状が出現して診断されます。
 ただし、高機能自閉症(アスペルガー症候群)では、症状が微妙であると、1才半健診や3才児健診の際に診断されず、小学生になってから自閉症と診断される場合もあります。
 診断の参考にされる主な検査には、各種の発達検査、言語検査、行動検査、絵画検査、などがあります。
 「自閉症」という言葉には様々なイメージがあり、中には誤っているイメージもあります。このため、医師が親に話すときに「自閉症」という言葉を使うと、親が誤ったイメージを持ってしまう危険があります。このため、自閉症を始め自閉症に類似した特性を持つ障害の総称である「広汎性発達障害」という言葉を使う場合もあります。

<経 過>
 周囲の人たちの適切な対応によっては、自閉症児は、めざましく成長することも可能である、といわれています。しかし、自閉症は、完全に治ることは困難で、生涯にわたって、いろいろな内容や程度の発達障害を示します。知的水準によって分けてみると、次のようです。
1.低機能自閉症;重度の精神遅滞があり、ことばによるコミュニケーションが困難で、社会生活機能が低水準です。幼小児期から自閉症特有の症状が続き、通常の社会生活は困難で、養護学校に就学し、卒業後は多くは知的障害者施設に通所あるいは入所します。

2.中機能自閉症;知的には軽度の遅滞であり、簡単な日常会話が成立します。多くは、心身障害児学級に通うことになり、思春期以降も社会生活を送るのに援助が必要です。

3.高機能自閉症;知的水準には遅れはなく、コミュニケーション可能な言語能力があります。通常教育を受けられる程度の学力がありますが、論理的思考や対人関係に支障がでやすく、社会に出ても協調性を要求される職場では不適応をきたす、など社会的自立に困難を生じる場合があります。

<治 療>
 まだ、根本的な治療法はありません。治療方針としては、早く診断して早く療養を始める、つまり、行動面、言語、自己統制能力、といったものを成長させるように、本人に働きかけることです。ですから、行動療法と教育がきわめて重要な治療法となります。療育には時間も手間もかかり、専門の治療施設が少ない、という問題点があります。
 特に効果的な薬というものはありませんが、攻撃性、かんしゃく、落ち着きのなさ、などを抑えるために、ある種の向精神薬を使うことがあります。
 また、親に対して心理療法をおこない、子供に対して適切に対処できるように導きます。
 専門家が提唱する「治療プログラム」というものもあり、「障害は障害として、その子供らしい生き方を求める」という方針で、専門スタッフと家族とが協力して療育に努める、というやり方です。

<家族や周囲の人の対処法>
 子供の抱える問題に、一番早く気付くのは家族であり、子供について最も情報を持っているのも家族、一番の治療者になれるのも家族、です。子供が混乱しないように、家庭、幼稚園・学校、医療者が共通の認識にたって対応していかなければなりません。家庭(保護者)を軸として情報交換をおこなう必要があります。
 自閉症児とのかかわり方については、次のようなポイントがあります。
1.落ち着ける環境を用意; 外界からの刺激に対する過剰な反応を防ぐために家具や装飾を最小限にした静かなスペースを確保したい。

2.ことばかけは統一し、シンプルに; ことばの理解が難しいため、できるだけゆっくりと短いことばで、話しかけること。用語の使い方を統一し、指示を出す場合の指示の出し方も統一しておく。

3.行動の流れをわかりやすく示す; 予定の行動を絵を使うなどして視覚的にわかりやすく示し、次の行動を見通せるようにして、情緒の安定をはかる。

4.行動の区切りを明確に; 行動の始まりと終わりを明確に示すようにする。特に「いつ終わりになるか」をよくわかるようにする。たとえば「時計の長い針が12になったら終わりね」というように視覚的にイメージできるように。

5.楽しく取り組める工夫を; 課題のテーマとして、好きなことや興味のあることを取り上げるなどして、本人が楽しく取り組んで、「できた!」という満足感を実感できるように進める。

6.パニックには冷静に対応を; 自閉症特有の「こだわり」が目立ってくると、自分の思うようにいかないときなど「パニック」と呼ばれる「かんしゃく」を起こします。イライラがたまってきた時の対処法をよく教えるなどして、本人の要求にすぐに応えてしまうことをせず、「しからないが、譲らない」という一貫した姿勢で対処します。パニックがおさまったら、「よく我慢できたね」とほめることも大切です。

7.興味の幅を広げる支援を; いつも同じ遊びに集中してしまう場合、その遊びを減らすのではなく、他の遊びにも誘ってみて、興味の幅を広げられるように支援していく。

<最後にひとこと>
 自閉症の子供は、いろいろ苦手なことがあり、行動の予測がむずかしく、一体どのように育てたらいいかわからない、と親は途方に暮れてしまうかも知れません。子供を育てることは、実は自分が「こども時代」を生き直すことともいえます。子供を育てながら、自分が子供に教えられていることに気付かされます。自閉症児は、冗談を冗談と理解できずに真に受けてしまう、暗黙の了解がわからない、他人の心理や場の雰囲気が読めない、などで人間関係に困難を生じますが、本来、人をだますとか、ずるいことをするとか、には全く関係しない純真な子供です。自閉症の障害を、その子の「個性」として受け取ってあげるには無理があると思いますが、障害は障害として理解し受けとめてあげて、そういう人もその人なりに生きていけるような、社会全体の余裕というか懐の深さというか、そういうものがあってほしいものです。

 もっと情報がほしい、支援がほしい、という方は「社団法人日本自閉症協会」のホームページに当たってみて下さい。
www.autism.or.jp/
 また、[発達障害者支援法]という法律が平成17年4月に施行されました。これは、自閉症を含めた発達障害を早期に発見し、乳幼児から成人まで支援し、自立をサポートするのが目的です。山梨県でも、専門的な支援機関として「山梨県発達障害者支援センター」が、平成18年4月に設置され、4名の専門スタッフがいますので、是非、ご相談下さい。(甲府市北新、「福祉プラザ」内、電話(055)254−8631、無料で相談できます)

解説コーナー[食と健康・食育について]
<食をめぐる最近の状況>
 我が国では、近年、「外食」あるいは調理済み食品・そう菜・弁当などを買ってきて食べる「中食」(なかしょく)を利用する傾向が増大しています。単独世帯の増加、女性労働者の増加など社会情勢の変化の中で、調理や食事を家の外に依存する食の外部化が進み、簡便化志向が高まりました。
 このように「食」をめぐる状況が変化し、その影響があらわれています。
例えば、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の「やせ」願望、食品の安全性への疑問、食糧の海外依存度の上昇(食糧自給率40%)、伝統的食文化の危機、などの問題が生じています。

<朝食の欠食>
 朝食を抜く、食べない、という「朝食の欠食」に代表されるような、不規則な食習慣が、子どもも含めて近年目立つようになってきています。朝食の欠食率については、男女ともに20歳代が最も高く、次いで30歳代となっており、年々増加傾向にあります。また、朝食を欠食する子どもは「つかれる」、「いらいらする」などを感じる割合が高いといわれます。
 日本人の平均睡眠時間が年々短くなっていることからも分かるように、夜更かしをする人が多くなっています。夜更かしをして、遅い時間に夜食を食べると、睡眠が浅くなり、朝は空腹感を感じなくなり、ぎりぎりまで寝るといった悪循環に陥りやすいです。

<朝食を食べるようにするには?>
 朝食を食べるようにするには「生活習慣全体を見直し、まず早起きすること」が大切です。早起きして朝の光を浴び、空腹を感じるころに朝食を食べる。そして1日の活動が始まる。こうした自然のリズムを作るのに朝食は不可欠です。

<食育とは?>
 最近、食育ということばをよく見聞きします。食育とは、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること、とされ、「知育」;知識の教育、「徳育」;道徳教育、「体育」:体育教育、の基礎となるべきもの、と位置づけられています。別の表現をすれば、国民ひとりひとりが、生涯を通じて、健全な食生活が実現でき、食文化の継承や健康の維持・増進が図れるように、自らが食について考え、適正な食習慣を形成・持続できるようなさまざまな知識と判断力を、楽しく身につけるための学習などの取り組み、を指します。
 「食育」ということばは、比較的新しいことばのように感じるかもしれませんが、実は、明治時代から提唱され書物にすでに出ていることばです。

<「食育基本法」について>
 2005年(平成17年)6月に成立した法律で、食育によって国民が生涯にわたって健全な心身をつちかい、豊かな人間性をはぐくむことを目的としています。国及び地方公共団体が講ずるべき「基本的施策」として、家庭・学校・保育所・地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者との交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性確保、などを定めています。具体的には、朝食欠食者を減少させる、学校給食における地場産物の使用をふやす、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の認知度を高める、などを含みます。
 こういう法律ができたから、ということでなく、小児期からの食育は大切なものですし、高齢者が生き生きと生活し、健康に過ごせる期間を長くするためにも、健全な生活習慣や食生活を心がけることは重要です。日頃は忙しく過ごしていて、調理や食事に時間や手間をかけられない家庭でも、休日などには親子で調理をし、なごやかに食卓を囲んで食事をしてみてはいかがでしょうか。忙しい中にも、メリハリをつけて、食育もできるとよいですね。


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