[経鼻的胃内視鏡(鼻から入れる胃カメラ)を導入]
胃カメラは苦しくて、本当につらい検査だ、と思っている人には大きな朗報です。今までの、口から入れる胃カメラでは、のどの局所麻酔の処置をしても、どうしても「ゲーッ」という反射がおこって苦しくなってしまう人がいます。これは、胃カメラのスコープが舌の付け根(舌根部)に接触し続けるために反射がおこってしまうからです。日本のすぐれた内視鏡メーカーは、最近、スコープを極めて細くすることに成功しました。この度、当クリニックで導入した超細径の胃カメラは、先端部の直径が5.2ミリメートルで、従来の直径9.2ミリにくらべると半分近くまで細くなりました。断面積では3分の1です。ここまで細くなると鼻から入れることが可能です。鼻から入れると、舌根部に接触しないために、ゲーッという反射がほとんど出ません。また、マウスピースを使用しないため、口を自由に動かせるので、検査中でも会話が普通に可能です。今まで、胃カメラは苦手だ、とか、胃カメラがあるから人間ドックは受けたくない、とか、尻込みしていた人は、是非、鼻から入れる胃カメラをためしてみて下さい。あんまり楽なのでビックリした、と驚くこと受け合いです。

[禁煙指導が保険扱いで可能となりました]
最近は、あらゆる所で禁煙が優先され、愛煙家には肩身のせまい世の中となりました。かといって、禁煙を自力で達成するのは、相当に大変なことのようです。それは、喫煙を急にやめるとニコチンの作用が切れて一種の「禁断症状」が出るからです。そこで、タバコをやめると同時にニコチンを貼り薬として補充しながら禁断症状を軽減し、徐々にニコチンの量を減らしていって、最後には貼り薬もやめる、という方法が勧められています。
今年6月から、禁煙指導とニコチンの貼り薬が健康保険で扱えることとなり、当クリニックは、健康保険で禁煙外来を実施できる施設として認定されました。ご自身のためにも、ご家族や周囲の人たちのためにも、この際、禁煙に踏み切ってみませんか? 禁煙外来では時間をかけた指導が必要ですので、なるべく平日の午後の診療時間に受診して下さい。電話予約も受け付けます。

[子育て支援に努めます]
急速に進む少子化に対して、最近、いろいろな対策が議論され始めています。私どもは、当クリニックでできることで、少しでも子育てを支援していきたいと考えています。その一環として、まず、小児科の予約診療をふやします。平日午後の診療時間では、小児の予防注射、乳幼児健診、診療および育児相談、については、ご希望の時刻をあらかじめ電話予約していただけるようにします。ご利用下さい。

解説シリーズ[心を考える](その4)
摂食障害(1); 拒食症(下)

前々号、前号に引き続き、拒食症について解説を進め、完結します。

<治療について>
拒食症の人は、病気であるという自覚がもちにくく、しばしば医師の診察を受けることに抵抗する場合があります。しかし、「治りたい、治したい」という気持ちが心のどこかにある限り、治療は可能です。実際、医師のもとを訪れる殆どの患者さんは、病的な「強いヤセ願望」と同時に、「治りたい、治したい」という気持ちを持っています。「治したいのに、健康になりたいのに、点滴はイヤだ!」、「入院治療の方が治療がうまくいきそうなのに、入院すると太らされるから入院は絶対にイヤだ!」という具合に、心が強く葛藤しているのです。
治療のポイントは、低下した栄養状態にもとづく身体症状に対処するとともに、体重や体型への誤った認識を正し、正常な食生活と体重の回復をはかって、心身両面の健康を取り戻していくことです。
治療には、大きく分けて、食事療法・栄養補給、薬物治療、心理療法、があります。

<食事療法・栄養補給>
食べることが怖い、つらい、という病気ですから、治療の最初から栄養バランスの良い十分な量の食事をすることは困難です。まずは、体重を回復させ、心身の能力を改善していくことを、めざします。
体重が30kgを割り込むと生命の危機状態です。一食抜いただけで、低血糖による意識消失発作が起こることがあります。本人が摂取できるカロリーが、1日に800キロカロリー以下の場合は、入院して点滴などの治療が必要です。
食事療法のポイントとしては、次のような項目が挙げられます;

*当初は、どんな食品でも、どんな食べ方でも、本人が少しでも楽に食べられるようにする。

*本人の好物や食べやすい食品を考えながら、本人が「このぐらいなら食べてもよい」と受け入れられるカロリー数を、なるべくふやしていけるようにする。

*本人が納得できるように、理論的な説明につとめ、あくまでも本人と相談しながらやっていく、という接し方を心がける。

*食品の種類や食べ方の工夫をする。たとえば、食品の種類については、市販の高カロリー食品、宅配で取り寄せられる食品、レトルト食品、さらには医療用の濃縮栄養食品などを利用してみる。また、食品は大皿に盛りつけたりせず、少量ずつの盛りつけにする。家族といっしょの食事に抵抗があれば、自室で食べるようにする、など。

*入院しての栄養補給では、鼻から胃へ細いチューブを入れて流動食を注入する方法(経管栄養)、太い静脈に点滴用のチューブを入れて高カロリーの点滴をする方法(高カロリー輸液法)、なども実施できます。

<薬物療法>
「拒食症を治す薬はないのでしょうか?」という質問は、患者さんの家族からよく出る質問ですが、残念ながら、この病気の特効薬はありません。薬による治療は、拒食症では、あくまでも補助的な治療法です。
食べることへの不安をやわらげるには精神安定剤を処方、うつ状態には抗うつ剤を処方、胃のもたれや便秘などには消化酵素・胃薬・下剤などを処方、など考慮します。漢方薬から選んで使う場合もあります。

<心理療法>
心理療法にはいくつかの方法がありますが、心の回復をめざすものですから、即効的なものではなく、少しずつ階段をのぼるように根気よく治療を続けることが大切です。心理療法をおこなうには、ある程度の体力と心理的能力が必要で、体重が35〜40kgを超えるぐらいまで回復してから、本格的な心理療法を始めます。次のような治療法がありますが、専門的になりますので、概略のみ記述します。

1.行動療法:
目標の体重を設定し、達成できたら面会や外出・外泊を段階的に許可する、というやり方で、適切な食行動に患者さんを導いていく、という治療法です。

2.再養育療法:
摂食障害の患者さんでは、乳幼児期の家庭に問題があって母性の欠如があったのではないか、と推測されるケースがみられます。母親を指導して母性の欠如を補い、患者さんの心を満たしていくことが本質的に大切、と考えて母親が患者さんに適切に対応できるようにしていきます。

3.家族療法:
家族内の対話、感情表現、行動などの問題が、拒食症に影響している、との考えから、家族を集めて話し合いをおこない、家族関係を作り直すために助言や指示をおこないます。医師は、中立の立場を心がけながらも、話し合いに介入していきます。

<家族の協力が不可欠>
家族の協力が得られるかどうか、によって、拒食症の治療全体の流れが大きく左右される場合があります。患者さんが矛盾した気持ちを持っていることを家族がよく理解し、患者さんを支持し治療に協力することが、治療を進める上で大きな助けとなります。患者さんが自分の窮状を一番理解してほしいのは、家族であり、両親です。「治療にあたってのご家族の心構え」としては、次の通りです;

*拒食は、本人の「わがまま」のせいではなく、病気によるものと認めてあげる。

*異常な食事内容や食行動、体重、には口出ししない。本人の主張に反対して、押し問答をしない。

*本人の心理的負担になりうる家庭内の問題をなるべく解決し、親への信頼と安心を回復する。

<学校の理解と協力が不可欠>
患者さんが学生の場合、日中の長い時間をすごす学校での理解と協力が大切です。親が拒食症に気づいていなくても、学校の担任や養護教諭が気付くこともありますし、定期健康診断で異常が発見できます。通常、学校での授業を受け続けるには、最低35kg以上の体重が必要です。それ以下では、思考力や理解力が低下し、体育の授業も参加がむずかしくなるでしょう。マラソン、水泳、登山、その他の競技スポーツのクラブ活動、修学旅行、などは、少なくも40kg以上の体重が必要です。

<最後に、ひとこと>
拒食症を長年にわたり研究してきたある専門医は、次のように言っています;
「医師になりたての頃、拒食症の患者さんを担当しました。まじめで頑張りやの良い子が、どうしてこんな病気にかかるのだろうか、と不思議に思い、ずっと勉強してきました。そして、自分なりに得た結論は次のようです;
本人が実力以上に無理をしているとこの病気がでます、やせ始めると自力で止めることができなくなります、やせると嫌な現実から逃げられるような気持ちになるようです、おかしな行動や心理状態は飢餓が起こしている現象です、周囲の大人が早期に適切に対応することで慢性化を防ぐことができます。
今の日本には戦争や飢餓などの大きな不幸はなく、ありがたいことですが、大人のうつ病や自殺が増えているのは、どうしてでしょうか? 子供はそういう大人と一緒に暮らしています。子供は、実力以上のものを要求され、余裕のない家族のしわよせを受けています。大人のように酒、カラオケ、旅行などで気晴らしもできません。放課後も、塾通いや習い事で、ぼーっとしていることもできません。子供のストレス病を考えるとき、大人たちがもっと心の余裕をもって、広い視野でものごとを考え、柔軟に生活していかなければならないと思うこの頃です。」


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