[解説コーナー]−−−食中毒について

<食中毒とは>
食中毒は、有害な細菌や物質の付いている食べ物が原因となっておこる病状です。
原因を分類すると、主に微生物、自然毒、化学物質の三つのタイプがあります。微生物によるものには、細菌、ウイルス、原虫、によるものがあります。自然毒はフグやキノコ類の毒素によるものです。食中毒の70%以上は微生物による食中毒です。
生活環境が衛生的かつ快適になった今日“食中毒なんて自分とは関係ない”なんて思ってはいませんか?
食中毒の患者数は、ここ30年以上にわたってあまり減少する兆しがありません。
かつて腸管出血性大腸菌O157による食中毒では、死者も出て深刻な社会問題となりました。一度に多くの食中毒患者が出るのは、食品メーカーの製造した食品や仕出し弁当の汚染、飲食店・学校給食・旅館やホテル・医療施設や事業所などでの食事、などが主なものですが、一般家庭での食中毒の発生は、ある統計では全体の10数%を占めて、決して少なくなく、無視できないものです。したがって、一般家庭でも、食中毒とその予防法の正しい理解が重要になっています。食中毒をおこす原因によって、原因食品や症状が異なりますので、それに応じた予防法を知り、食中毒の被害にあわないよう心がけてください。 知っていれば防げることもあります。日頃から、被害を最小限にくい止めるよう心がけることが大切です。

<食中毒の症状>
食中毒では、原因となる細菌や物質などが食物に付いて体の中に入り、胃腸炎が起こります。食べてからおなかが痛くなるまでの時間は、原因によって異なります。早いもので4時間くらい、長いと3〜5日後に出ることもあります。どの原因でも、下痢・嘔吐・発熱・腹痛がおもな症状です。便に血液が混じることもあります。

<食中毒の季節的変動について>
平成15年に日本全国から報告された食中毒は、原因の判明しているものだけでも、1603件あり、1月1日から12月24日までほぼ一年中にわたって報告がありました。月別の報告数では、1月;117件、2月;109件、3月;120件、4月;90件、5月;118件、6月;136件、7月;189件、8月;216件、9月;157件、10月;131件、11月;95件、12月;125件、というふうで、確かに夏季に多いのですが、冬季にも決して少なくはありません。

<食中毒の原因別の特徴について>
食中毒の原因の大半を占める微生物によるものを次のように分類してみます

1.細菌性食中毒
( 感染型)食品に付着した細菌を、食品と一緒に食べることにより発病します。
カンピロバクター,サルモネラ属菌,腸炎ビブリオ,病原大腸菌,ウェルシュ菌,その他
(毒素型)食品中で増えた細菌が毒素を作り、この毒素を食品と一緒に食べることにより発病します。 黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌、など。

2.ウィルス性食中毒: ノロウイルス(小型球形ウイルス)、その他

3.原虫類などによる食中毒: 原虫(クリプトスポリジウム、サイクロスポラ)、真菌
これらの微生物の主なものを中心に、原因別の特徴を簡潔に説明します;

[カンピロバクター]−−−生の鶏肉や牛肉が要注意!
最近になって発生件数が増え、注目されている食中毒菌です。ふだんは鶏や牛などの腸に住み、食品や飲料水を通して感染します。少量で感染し、人から人へ直接感染したり、ペットから接触感染する例もあります。 生の鶏肉や牛肉が感染源となることが多く、生乳などの畜産品や飲料水などから見つかった例もあります。また、犬や猫などのペット、ネズミなども保菌しているため、これらから感染することもあります。
感染から発症するまで2〜7日かかります。まず、発熱、けん怠感、頭痛、めまい、筋肉痛がおこり、次に吐き気や腹痛におそわれます。その後、数時間から2日後までに下痢がおこり、水のような便が出ます。1日の下痢回数は2〜6回くらいで、ときには10回以上におよぶこともあります。 予防のポイントは、食肉類と他の食品とは別々に保存し調理する、十分な手洗い、二次汚染の防止など。

[サルモネラ]−−−鶏卵や食肉が要注意!
もともと自然界に広く分布し、牛・豚・鶏などの家畜・家禽、犬や猫などのペットも保有しています。ネズミ、ハエ、ゴキブリも汚染源になります。牛・豚・鶏などの食肉、卵などが主な原因食品ですが、調理器具を介して他の食品も汚染される心配があります。特に近年では鶏卵のサルモネラ汚染率が増加し、卵内にも菌が認められることがあるので注意が必要です。これまでに、卵焼きやオムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどからもサルモネラ食中毒がおこっています。また、ペットからの感染も要注意です。
食べてから、半日から2日後までに吐き気やへそ周辺の腹痛がおこります。下痢をくりかえし、38℃前後まで発熱します。「腸感冒」の症状とよく似ている場合もありますので、注意して下さい。予防のポイントは、食肉類の生食は避ける、冷蔵庫内や調理器具による二次汚染を防ぐ、熱に弱いので十分加熱する、手指の洗浄消毒、など。

[腸炎ビブリオ]−−−海産物が原因、新鮮でも油断なく!
この細菌は海水や海中の泥に潜み、夏になると集中的に発生します。熱に弱く、100℃では数分で死滅し、5℃以下ではほとんど増殖しない、真水に弱い、という性質があります。 汚染の出発点は魚介類などの海産物です。夏になると、近海産のアジやサバ、タコやイカ、赤貝などの内臓やエラなどに付着しています。これらを生食用のさしみにするとき、さしみに移って感染します。また、魚介類に付着した腸炎ビブリオが、冷蔵庫の中やまな板などを通じて他の食品を汚染し、その食品から食中毒をおこすこともあります。食べてから、8〜24時間後に激しい腹痛と下痢がおこります。特に腹痛はさしこむような激痛で、猛烈な苦しさを伴います。また、激しい下痢をくり返すため、脱水症状をおこすこともあります。発熱はあまりなく、治療により2〜3日で回復可能ですが、便が正常に戻るまでには1週間くらいかかります。予防のポイントは、漁獲から消費まで一貫した低温管理、2次汚染防止、加熱処理、魚介類は調理の前に真水でよく水洗いする。

[ブドウ球菌]−−−手や指のキズに要注意!
ブドウ球菌は自然界に広く分布しており、健康な人の皮膚やのどなどにもいます。汚染された食品の中で増殖し、毒素をつくります。この毒素は熱や乾燥にも強いという性質があるので、十分な注意が必要です。 ブドウ球菌による食中毒は、おにぎりや弁当、サンドイッチ、おはぎ、ケーキなど、菌が調理する人の手から伝わって食品に取り込まれます。特に、調理する人の手や指に傷や湿疹があったり、傷口が化膿しているような場合は、食品を汚染する確率が高くなります。 食べてから、およそ3時間以内に吐き気や激しい嘔吐がおこります。腹痛や下痢も伴いますが、高熱になることはあまりありません。脱水症状のある場合、点滴が必要になります。予防のポイントは、手指に傷のある人の調理を禁ずる、手指の洗浄消毒の励行、です。

[病原大腸菌,O−157など]−−−最も恐い食中毒です!
これについては、「クリニックだより」第28号ですでに特集して解説してあります。病原大腸菌とは、腸炎をおこす大腸菌で、人、家畜、ペット、自然環境にまで分布しています。五つのタイプに分類され、中でも腸管出血性大腸菌(O157等)は、恐ろしいものです。食品や飲料水から口を通って感染します。 井戸水などを介して水系の集団発生もみられます。症状は、腹痛が激しく、下痢をくりかえし、出血を伴う(赤ワインのように真っ赤な鮮血)ようになります。経過中4〜8日目で猛毒の「ベロ毒素」によりHUS(溶血性尿毒症症候群)をおこし命にかかわることもあります。井戸水を介して幼稚園で集団発症した事例が有名です。予防のポイントは、十分な手洗い、食材や調理器具をよく洗う、井戸水を生のまま飲まない、井戸水等の定期的な水質検査、調理従事者の定期的な検便、などです。

[ノロウイルス(小型球型ウイルス)]−−−牡蛎(かき)で要注意!
最近になって、このウイルスに汚染された牡蛎(かき)を食べて激しい嘔吐と下痢をしめす急性胃腸炎の集団発生が世界各地で多数報告され、注目されています。牡蛎の出回る冬季に多く発生します。食品や飲料水を介して感染しますが、人から人への感染も報告されています。 食品としては、牡蛎が多いのですが、サラダ、果実、ケーキなど、生のまま食べる食品から感染することもあります。食べてから、1〜2日で発症します。主な症状は嘔吐と下痢で、特徴的なのは発病当初に激しい症状をおこすことです。頭痛、発熱、咽頭痛など、かぜとよく似た症状がみられる場合もあります。牡蛎以外に、大アサリ、シジミ、ハマグリ、などの二枚貝が原因食品となります。これらを調理したまな板などの器具は、よく水洗あるいは熱湯消毒等を行って他の食材への二次汚染を防止することが重要です。ノロウイルスは、食品の中心温度85℃以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。

[食中毒の予防]
食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。この三原則にもとづき、家庭でできる食中毒予防のポイントを、「食品の購入」、「家庭での保存」、「下準備」、「調理」、「食事」、「残った食品」の6つに分けて考えてみるとよいでしょう。今回は、詳しく解説するページが足りなくなりましたが、食中毒は簡単な予防方法をきちんと守れば予防できます。それでも、もし食中毒が疑われたら、かかりつけの医師に相談しましょう。


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