[医療費の窓口負担等が改定されました]
 
老人医療費の増加が医療費全体の総額を押し上げて、健康保険制度そのものの存続さえも危うくしている、という実情を前に、もう何年もの間有効な対策ができないままです。
高齢化がすすんで老人が増えているし、一般に高齢者はいくつもの病気を持っていることがあるから一人当りの医療費も高額になりやすい、といった構造的な要因があるので、老人医療費の増加はある程度やむを得ない事情もあります。
 以前から厚生労働省は、医療制度の改革の必要性を唱え、2000年には抜本的な医療制度改革をおこなう、といいながら、それができずに今日に至っています。ここ数年おこなわれていることは、従来と同じで、患者さんの負担金を増やし、薬の値段(薬価)を切り詰める、というパターンの繰り返しです。聖域なき行政改革をめざしている小泉内閣においても、医療制度の改革はどうも思うように進まないようです。
 さて、この10月1日から、主に老人医療についてですが、医療機関での患者さんの窓口負担が大きく変わりましたので、解説いたします。

<改定のポイント>
1. 高齢者の窓口負担金が1割、または2割になりました。
2. 患者負担金の月額上限が大幅に引き上げられました。
3. 老人保険の対象年齢が75才に引き上げられます。
4. 3才未満の乳幼児の窓口負担が3割から2割へ引き下げられました。

<各項目の解説>
1. 従来、診療所での老人医療については、診療1回につき850円(1か月に4回まで)という定額制がおこなわれていましたが、この10月1日からは、定額制は廃止され、すべての病院・診療所・調剤薬局において定率負担となります。

*原則として、医療費の
1割負担

*一定以上の所得の方は
2割負担となりました。
ご自分が1割負担か、2割負担か、は新しく交付された「医療受給者証」または「高齢受給者証」に明記されていますので、確認して下さい。この負担割合を受付窓口で確認させていただき、会計をいたします。医薬分業で、院外薬局から薬をもらう場合、薬局でも1割の負担金の支払いが必要です。
尚、一定以上の所得とは、課税所得;124万円以上、または高齢者の世帯収入が637万円以上(高齢単身者では、450万円以上)、の場合をいいます。

2. 金額の多い少ないにかかわらず、受付では1割、または2割の負担金をお支払いいただきます。この時点で、1回にお支払いいただく金額には限度額はなく、青天井です。実際には、薬や検査の多くない患者さんでは、従来の850円より負担が減る場合もかなりあります。1か月分の合計の負担金が一定額(月額上限)を越えた場合は、翌月に申請をすると市町村または保険者から超過分が払い戻されます。実際に払戻金が患者さんに返金されるのは、申請から1〜2か月後になるものと思われます。このように、定率の負担金を一旦全額お支払いいただいた上で、申請後に超過分を払い戻してもらう、というやり方を「償還払い制」といいます。

*1割負担の方では、月額上限;
12,000円

*2割負担の方では、月額上限;
40,200円

*住民税非課税の世帯の方、所得が一定の基準に満たない方、では
 月額上限;
8,000円です。
実際には、医院での診療の範囲内で、これらの月額上限を越える患者さんは、非常にマレなケースと思います。非常に高価な特殊な薬剤を使用するような場合ぐらいでしょう。逆にいうと、ほとんどの患者さんで、払い戻し金は発生しないものと考えられます。ただし、いろいろな病状があっていくつもの医療機関に受診している場合、合算すると月額上限を越えることがあるかも知れません。患者さんにとっては、「高額医療費支給申請書」という書類をもらいに行って、記入し、提出するという手間がかかるわけで、めんどうなことと思います。
尚、入院の場合にも1割、または2割の負担になり、月額上限が定められましたが、ここではくわしい説明は省略させていただきます。

3. 今回の改定で、老人保健法で定められている老人医療の対象者は、従来の70才以上から、75才以上に引き上げられることになりました。

*すでに75才以上になっている患者さんは、老人医療の対象者として、1割または2割の負担となり、医療費の計算は老人点数表を用いた計算になります。

*平成14年9月30日までに70才になっている患者さんなど、制度の改定される前にすでに老人医療の対象者となっていた方は、そのまま老人医療の対象となります。9月30日までに新しい「医療受給者証」が、お手元に届いているはずです。

*平成14年10月1日以降に新たに70才になる患者さんは、満75才になるまでは老人医療の対象ではありませんが、70才になった時点で「高齢受給者証」が交付され、1割または2割を負担、薬剤一部負担金を免除する、など老人医療と同様に扱います。ただし、診療保険点数は、一般患者の点数表を用います。

*従来、70才未満でも山梨県老人医療費支給事業に基づく老人医療制度(県単制度、41老人)で、老人医療の扱いを受けていた方は、受給者証の変更はなく、現在交付されている受給者証が有効です。窓口での支払い額は
1割負担となります。

4. 3才未満の乳幼児の窓口負担金は、従来は医療費の3割でしたが、今回、2割負担に軽減されました。満3才の誕生日が属する月の月末まで、2割の負担となります。ただし、その月の初日(1日)が3才の誕生日の場合は、その前月までが2割負担です。少子化がすすんでいるので、医療費の負担を少しでも軽減することで、少子化への歯止めになれば、という思惑があるのでしょうか。ただし、実際には、満5才になるまでは一旦窓口で負担金を支払っても、翌月に申請することで償還払いによって各市町村から払い戻されますので、特に負担が軽減されるということでもないと思われます。つまり、一旦支払う負担金が3割でも2割でも、その金額が後で戻ってくるのは同じしくみです。診療を受けた際の出費が1割分少なくてすむ、ということだけです。

<補足説明>
*以上の説明は、さしあたり知っておいていただきたい原則を中心に書いてみましたが、もっと細かい取り決めもあります。たとえば、月額上限を越えているかどうか、払い戻しが受けられるかどうか、などで不明な点が出るかも知れません。当方でわかることは説明いたしますが、竜王町の場合は、総合保健福祉センターの国民健康保険係に問い合わせて下さい。

*医療費の負担増のたびに申し上げていますが、窓口で患者さんから今までよりも多くいただくことになっても、それによって医院の収入がふえるわけではありません。患者さんの負担がふえた分、健康保険から医院へ支払われる分が減るからです。

*医療費の負担が今までよりも増えることは、どなたにとっても歓迎できることではありません。私ども医療を提供する側も、ムダを省き、医療費を有効に活用する方策を考えていきたいと思います。生活習慣の改善、健康増進、病気の早期発見・早期治療、などにつとめて、結果的に医療費の節約ができるといいと思います。 



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